職場における人の問題を考える②

職場でカウンセラーとして働く人の悩みを聞いてみると、一見仕事における心配や不安のような話題も、突き詰めると上司~部下間の意思疎通の不足だったり、同僚間の連携協力の不味さなどが基本的課題と判明することが少なくない。

結局、さまざまな職場の問題の背景には、人間関係におけるコミュニケーション不全の問題が根底にあると気づかされることが、しばしばである。

近年、業務における効率性、生産性が重視され、数値で示される結果至上主義があらゆる職場に浸透、働く場における人の存在は道具化、歯車化して、仕事に関係ない会話や相互交流は無駄で価値ないものと徹底排除されがちで、そうした人間関係の希薄化はコロナ禍で一層進んでいる。

「あなたの職場の人間関係は良いですか?」と尋ねると「普通です」と答える人が多い。多分「とても良いですよ」と言い切れるほどではなく、可もなく不可でもない、問題は起きていない、という消極的な評価レベルに止まる職場が圧倒的に多いようだ。

管理者や上司は、何事も「問題ない」という状況を喜び、「それで良し」と安心しがちだが、こと人間関係において、そうした表層的、消極的な相互関係の在り方は、危機的な緊急事態や突発的な対応事態などに対して、全くもって適応力や課題突破力を発揮できず、混乱状態に陥りやすい。

役割や分担任務に規定された効率的ビジネスコミュニケーションは、常態の慣例的・定例的な業務展開の中では有効であり、「問題なし」でOKであろう。ところが、常態でない異常事態、非常事態では、役割や分担任務を超えた、臨機応変の応用力や連携協力が求められる。

そうした、通常とは異なる連携協力の基盤になるのが、機械的な役割関係を超えた、人間的な相互理解や相互信頼であり、そうした関係を醸成・促進するのが、実は日頃の雑談や冗談など、仕事と関係ない無駄話なのである。

日々の業務に追われる状況下、お互いにホッとできる気さくな一言や声掛けは、ユニークな個性や人柄を伝え合う貴重な機会であり、相互の関係性を深める大切な瞬間でもある。

職場の人間関係が「普通です」と消極的評価に止まる場合、実のところスタッフ間の精神的な繋がりは浅くて、危機事態での連携協力など満足にできず、職場は容易に混乱しやすいと用心すべきだろう。

morikawa